【「相棒型」医療ミステリ】天久鷹央の推理カルテ【感想】

小説・ミステリ

おすすめ度

 ★★★★☆(4.1)

この作品が好きそうな人・苦手そうな人

この作品が好きそうな人

・知識系のミステリが好きな人
・連作短編が好きな人
・軽めの作品も素直に楽しめる人。
・(ドラマ「相棒」が好きな人)

この作品が苦手そうな人

この作品が苦手そうな人
・傍若無人な人物が苦手(フィクションでも)
・本格派のミステリが好きな人
・予想を裏切られるような構成が好きな人

あらすじ

統括診断部。天医会総合病院に設立されたこの特別部門には、各科で「診断困難」と判断された患者が集められる。

河童に会ったと語る少年。人魂を見た、と怯える看護師。突然赤ちゃんを身籠った、と叫ぶ女子高生。だが、そんな摩訶不思議な“事件”に思いもよらぬ“病”が隠されていた……?

頭脳明晰、博覧強記の天才女医・天久鷹央が解き明かす新感覚メディカル・ミステリー。
(書籍に記載されているあらすじから引用)

感想

病院を舞台としたミステリの一作目です。本格派のミステリというよりは比較的ライトな内容で、一話完結型の短編なので本を読み慣れていない人でも、入り込みやすいと思います。

この作品の主な舞台となっている天医会総合病院の「統括診断部」は「診断困難な患者が集まる」場所ですが、実際は閑職のような扱いです。ドラマ「相棒」の特命係のような部署ですね。

そのため診断の難しい症例というよりは、長々と愚痴を言うような面倒な患者が集まる傾向にあります。その中で不思議な症例や証言に出くわしたり、その噂を聞きつけた人がメールで依頼をしてきたものに興味を持ったり、という感じですね。

著者が現役の医師ということもあり、病気に関する知識が非常に豊富で、病院に来た患者の症状から同時に起きている事件の真相を解明する。または診断の難しい病気の診断をする、といった流れです。

この作品はシャーロック・ホームズに似た形式で描かれています。主人公の小鳥遊優(ワトソン)の視点で、天久鷹央(ホームズ)の活躍を描写する、という形ですね。

統括診断部の部長である天久は、知識が豊富で観察眼にも優れた優秀な医者なのですが、傍若無人なタイプで人付き合いは得意ではありません。
対して小鳥遊は医師としての腕前は平凡ですが、色々なことをそつなくこなせるタイプで、天久に振り回されながらも、彼女の活躍をフォローしていきます。

ちなみに、天久は診断をするシーンは出てきますが、手術などの描写はありません。そういった描写が苦手な人でも、問題なく読めると思います。

私は雑学が好きなこともあって本作は面白く読むことができました。聞いたことだけはあるような病名から、全く聞いたことのない名称まで登場しますので、そういった作品が好きな方も楽しめると思います。

なんとなく「相棒」に似た雰囲気もあり、そういった意味でもでこぼこコンビというか、性質の違う二人が活躍する作品という見方もできるかもしれません。ワトソンの役回りの小鳥遊にもちゃんと見せ場があります。

ただ、本格派のミステリを読み慣れている方にとっては少し物足りないかもしれません。事件を解決する過程に医学知識が含まれるため、トリックを完全に見抜けることは少ないと思いますが、伏線がそれと分かりやすいかもしれません。

本作が刊行されている新潮NEXは、私の印象ではライトノベル寄りの作品が多いイメージです。そんなわけで、最近疲れている、あんまり考えずに読みたい、といった方々には水戸黄門を見るような感覚で楽しめると思います。

その反面、物理トリック等の巧妙に練られたトリックや伏線、思いもよらない結末を読みたい! という方には物足りないかもしれません。

私は病気を真相の一部として使ったミステリは読んだことがなく、純粋に楽しめました。

気になった方はぜひ手に取ってみてください。続編も出ていますよ。

では、みなさんが良い本との出会いに恵まれますように。

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