【そこには「あなただけ」ですか?】「恐い間取り」【松原タニシ】

小説・ホラー
Photo by Enzo B on Unsplash

おすすめ度

 ★★★☆☆(3.5)

短く、ライトに怖がりたいあなたに。

好きそうな人・苦手そうな人

好きそうな人

・短編ホラーが好きな人

・実話ホラーを読みたい人

・ホラーの入門をしたい人

・じわじわと怖いホラーが好きな人

苦手そうな人

・練られたホラー作品が好きな人

・心霊現象を一切信じない人

・身近な場所で起きるホラーは苦手な人

作品情報

著者:松原タニシ

ジャンル:ホラー(エッセイ)

ページ数:255ページ(あとがき含む)

出版社:二見書房

備考:映画化原作

紹介・感想

あなたにとって家はどんなところですか?

雨風をしのぎ、外敵から身を守って、安心して過ごせる、そんな場所でしょうか?

もし、そこにあなたが知らない住人がもう一人いるとしたら。

そこは、まだ安心できる場所でしょうか。

紹介

本書は事故物件での生活をつづったホラー実話集です。

2020年8月には映画化もされており、亀梨和也氏が主演しています。

著者の松原タニシさんは「事故物件住みます芸人」として活動中です。

当初はテレビの仕事として、事故物件に住み始めたとのこと。

本書執筆時点で6軒の事故物件に住んでおり、その経験を元に書かれたものが本書となります。

基本的には1話完結で、特にストーリーがあるわけではありません。

事故物件に実際に住んで、そこで起きたことや感じたことが淡々とつづられています。

前半は著者の実際に住んだ事故物件での体験談。

後半は知人から聞いた事故物件での体験談や、自身が行った心霊スポットの紹介です。

1話あたりが短いため、テンポよく読み進められます。

手軽に恐い経験をしたい人に向いていますね。

感想

私はかなりに楽しめました。

本書のようなホラー実話集を読んだのは初めてです。

一話が短いため読みやすく、適度に怖がれました。

1話完結のため、区切りが分かりやすくサクサク読み進められます。

怖さの質としては間接的に怖いタイプです。

日本のホラーのように、じわじわ迫ってくるような怖さです。

明確に怖い現象が起きる、体験するというものではありません。

後で振り返ってみると説明がつかない、奇妙な偶然が重なっている、という感じです。

例えば

・ビデオカメラに映る無数のオーブ(正体不明のもや)

・塗りつぶされた浴室の鏡、排水溝に詰まった大量の毛髪

・誰もいないのに反応し続ける防犯センサー

想像すると不気味で、嫌な気分になるものが多いです。

著者は霊感がないそうなので、霊感のある方であればまた違うのかもしれません。

それぞれの話はオチがあるようなものではありませんが、それだけに現実味があります。

私は先に映画版を見たのですが、怖さでは映画よりも書籍の方が上、という印象でした。

映画は映像を重視するせいか、本に比べて怖さが直接的なものになっています。

テンポよく怖がりたいなら映画、じんわりと体を冷やしたいなら本、という感じでしょうか。

怖さのレベルで言えば、夜中に一人でトイレに行けるなら、問題なく読めると思います。

じわじわと迫ってくるような怖さなのですが、あまり後には残りません。

びっくり系のホラーや海外のスプラッター系が苦手な人でも楽しめます。

各話が短いせいなのか、「夜怖くて眠れない」「トイレに行けない」という残り方はしにくいです。

ただ、読んだ直後は鏡を見るのを躊躇したり、物音が気になったりするかも。

2、30分くらいすると怖さが徐々に抜けてきて、気にならなくなります。

ただし、怖がりで一人暮らしの人が夜に読むのは、あまりオススメしません。

ちなみに、幽霊の正体についてはいくつか説があります。

一番有力なものは、幻覚や錯覚という身も蓋もないもの。

他には、心霊スポットには可聴域外の19Hzの音波が観測されており、これが幻覚の一因という説。

並行世界の影、というものもあります。

証明された仮説はないようですが、意外に科学的なものだった、なんて日が来るかもしれませんね。

逆に科学では証明できない、と証明されたら。

それはそれで面白そうですね。

本書の注意点としては、全てが著者が住んだ物件・体験談ではない、ということです。

後半は「友達の友達から聞いたんだけど……」という内容や、心霊スポット巡りが多くなります。

そのため、中盤以降は通常の怪談に似た部分があり、人によっては物足りないかもしれません。

後半に失速感があるのは少々残念ですね。

私は自分で小説を書く際の参考として読みましたが、十分に目的は果たせました。

ページ数のわりに事例が多いので、資料として読むのも面白いと思います。

身近な「家」という空間だからこそ、共感出来たり、理解しやすい部分は多いでしょう。

別世界の怖さより、身近な怖さを感じたい方は、一度読んでみてはいかがでしょうか。

では、あなたが素敵な本との出会いに恵まれますように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました