おすすめ度
★★★★☆(4.2)
カラスが嫌いな人も、カラスが好きになれるかもしれない一冊です。
好きそうな人・苦手そうな人
・雑学が好きな人
・カラスのことを知りたい人
・少し変わった本が読みたい人
・暇潰しがしたい人
・専門的にカラスを知りたい人
・役に立たない知識が好きではない人
・雑談のような内容が苦手な人
あらすじ
ごみを漁り、カアカアとうるさがられるカラス。走る車にクルミの殻を割らせ、マヨネーズを好む。
賢いと言われながらとにかく忌み嫌われがちな真っ黒けの鳥の生態をつぶさに観察すると、驚くことばかり。
日々、カラスを追いかける気鋭の動物行動学者がこの愛すべき存在に迫る、目からウロコのカラスの入門書。
(本書裏表紙より)
書籍情報
ページ数:365ページ(あとがき、その他含む)
著者:松原 始
ジャンル:雑学
出版社:講談社
感想
「黒いやつが来る」と聞いて、あなたはどんな想像をするでしょうか。
快適な想像をする方は、少ないのではないでしょうか。
名前も極力呼びたくない昆虫とか、ごみを散らかしている黒い鳥とか。
良くても黒猫、黒犬とかでしょうか。
もっとも、キリスト教では黒猫は魔女とつながっている、不吉なイメージがありますね。
また、イギリスで「黒犬(ブラックドッグ)」というと、不吉な妖精として伝わっているそうです。
ともあれ、「黒い生き物」と聞くと、あまり良いイメージとはつながりにくいようですね。
本書はそんな中でもちょっと怖いイメージのある黒い鳥、「カラス」について書かれています。
ごみを散らかして、人を襲うこともあって、弁当のおかずを奪っていったり。
しかも、身近な鳥の中では体もくちばしも大きい。
正直、良くないイメージが強いのではないでしょうか。
どれも間違ってはいませんね。
頭がいい、という話もありますが、普通に生活していたら「だからどうした」という感じでしょう。
本書はそんなカラスが少し可愛く見えるようになる、そんな本です。
著者の松原氏は非常に「カラス愛」にあふれた方で、本書も非常に愛情あふれた書き方をされています。
案外、カラスについて我々が誤解している部分も多いようで、そんな誤解を面白可笑しく解説してくれています。
私が印象に残っているのは、「カラスも人間に対してビビっている」ということです。
カラスからすれば人間は、体重差のある大型の獣として映っているそうです。
鳥は元々軽いので、なおさらですね。

また、人間を攻撃することはあっても、「雛を守るため」という場合だけなのだとか。
たまたま視線を向けた先が育児中のカラスの巣で刺激してしまった、という場合も多いようです。
我々からすれば、隠されている鳥の巣を狙っているわけではないのですが……。
他にも、昔カラスにイタズラした人と格好が似ていて間違われたり。
カラスの側にも悪意があるわけではなく、ビビっているからこそなのか、と面白く感じました。
カラスの生態の他にも、国ごとの伝承を簡単に紹介していたり、かなり幅広い内容です。
「真面目な研究内容を書いた本」というよりは、「一般人向けの雑学寄りの読み物」という感じです。
中には、カラスの習性から見たカラス対策、のような役立つ知識もあります。
文章もしゃべり言葉で読みやすく、筆者の体験談も面白いものが多いです。
気楽にカラスのことを少し知りたい、という入門用にいいと思います。
逆にカラスについて専門的に知りたい、という方には向かないですね。
カラスに興味がない、という方も誤解を解いて対策をするために、読んでみても面白いと思います。
可愛い挿絵も多いので、ページ数の割にさっくり読めて、癒されますよ。
では、あなたが素敵な本との出会いに恵まれますように。
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