あなたには悩みがありますか?
深刻さはともかく、誰しも悩みを持っているのではないでしょうか。
そんな悩みを笑いに変える、少しロックな考え方に興味はありませんか?
少し常識はずれで、笑いで悩みを軽くする。そんな一冊をどうぞ。
おすすめ度
★★★☆☆(3.5)
今の悩みを笑ってしまいたいあなたに。
好きそうな人・苦手そうな人
・肩の力を抜いて笑いたい人
・自分とは違う考えを知りたい人
・ロックな考え方が好きな人
・人生を救ってほしい人
・真面目過ぎる人
あらすじ
あらすじ
「美人なのにふられる」「テレビが壊れた」「夫が愛してくれない」「年長者がサボってばかり」「やりたいことがありません」などなど、芥川賞作家・町田康が、一筋縄ではいかない数々の相談に答える「どうにかなる人生相談」。そして気鋭の物語作家・いしいしんじと東京の街を歩きながら人生について語り尽くす「苦悩の珍道中」を収録。世の悩める人々へ贈る、パンクな人生応援歌。
(本書裏表紙より抜粋)
作品情報
著者:町田康、いしいしんじ
ページ数:320ページ
ジャンル:エッセイ
出版社:角川文庫
紹介・感想
紹介
本書は町田康の前半人生相談、後半は町田氏といしい氏の対談の2部構成です。
人生相談は毎日新聞日曜版に連載されていた「どうにかなる人生」を集めたもの。
寄せられている相談はさまざまで、
・妻が痩せない
・酒を飲みすぎる
・ネコがいなくなった etc
どれも日常的な質問で、誰でも自分の持つ悩みと似たものを見つけられるでしょう。
後半の対談は両氏が東京の浅草、新橋、丸の内を散歩しながらの対談です。
散歩をしながら街行く人々をみてあれやこれや。
時には酒を飲みながら、のんびりと話していきます。
人生相談も対談もゆるっとしていて、肩肘の張らない感じです。
腰をすえて読むのではなく、頬杖をついてのんびり読むのが向いています。
ちなみに、後半の対談相手・いしいしんじ氏は作家で、「トリツカレ男」などの作品があります。

感想
人生相談
人生相談は新聞に寄稿された悩みに答える形式です。
ですが、9割ほどはあまり答えになっていません。
一見すると答えになっていないというか、かなり無茶な返答が多いです。
「隣人が道路で騒いでうるさい」→
「隣人へうるささを伝えるために、あなたも道路で奇声をあげて騒いでみては」

必ずしも間違ってはいませんが、それが出来れば苦労はしない。
悩みそのものがバカバカしく感じるような、少し外れた返しがほとんどです。
返答を受けた寄稿者が笑って悩みを忘れられれば、それが一番の解決なのかもしれません。
逆にビジネスライクな、実際に使えそうな返答を期待している人には合わないでしょう。
読んでいる分には面白いので、純粋な読み物としては楽しみやすいと思います。
対談
後半の対談は、両氏が町を歩きながら、目にしたものに感想を言っていく感じです。
2人が歩いていく景色は西暦2000年前後ということもあって、少し古さを感じさせます。
実際に2人が見た景色見覚えがあるのは、30代後半以降の方でしょうか。
文字通り行き当たりばったり、喫茶店や飲み屋にも入りつつ、自由な会話を繰り広げます。
両氏ともに創作活動をするためか、世間への見方も独特です。
しかし、ただ独特なだけではなくて、観察がよく表れています。
街を行きかうサラリーマンを見て、「みんな、どこかと繋がっていたいのだろう」と話したり、
町田氏の「人の悩みは全部人間関係」という発言も印象的です。
適当な話題から始まって、徐々に哲学的な話題になるあたり、
普段気にしないことに真理があるのかもしれませんね。

感想
この本の中で紹介されている(回答した)悩みの解決方法は、一見ムリなものが多いです。
でも、それは本当にそうなのか? とも同時に感じました。
常識から外れた考えであることは、間違いありません。
でも、「不可能」というわけでもないです。
「出来ない」理由はほとんどが世間体や、面倒くささといったものでしょう。
とはいえ、平穏に生活をしていきたいなら、あまり実現するのは難しい。
では、そんな回答だと分かっていながら、なぜ悩みを相談する人がいたのか。
私が読んで感じたのは、
①寄稿者が求めていのは「笑い」なのではないか。
②回答に真理「も」含まれている。
この2つがあるのではないか、と思います。
①は、自分の悩みを聞いて、それを大したことじゃないと笑いに変えてもらう。
半ばふざけた回答をもらって、一緒に笑って、悩みの小ささに気づく。
自分だけでは気づけない、「面白さ」を求めているように感じました。
回答の大半は常識の斜め上を行く、ロックな回答です。
真面目に考えるばかりでは、上手くいくものもダメになる。
そんな当たり前のことを、改めて気づかせてくれます。
②は、的を射た回答も多いためです。
「隣がうるさいなら、あなたも騒いじゃえ!」なんて、ふざけているように感じます。
でも、「相手を真似て、相手のことをしっかり知る」ことにもつながりますよね。
自分の見方だけでは、なかなか正しい答えにたどり着けません。
それなら、時には自分の常識を捨ててしまうことも、必要ですよね。

「幸福な人は、自分のことを幸福だと考えている」。そんな研究があるそうです。
この本そのものは、人生を救ってくれることはありません。
でも、自分の悩みが案外小さいことを知って、前を向く。
自分の常識にとらわれずにチャレンジしてみることで、人生が変わることはありえます。
あなたの考え方ひとつで世の中が違って見える。
そんな小さなきっかけになる……かも。
では、あなたが素敵な本との出会いに恵まれますように。
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