【悩みを笑いと彩りに】「人生を救え!」【町田康、いしいしんじ】

書籍・エッセイ
Image by pixel1 from Pixabay

あなたには悩みがありますか?

深刻さはともかく、誰しも悩みを持っているのではないでしょうか。

そんな悩みを笑いに変える、少しロックな考え方に興味はありませんか?

少し常識はずれで、笑いで悩みを軽くする。そんな一冊をどうぞ。

おすすめ度

  ★★★☆☆(3.5)

今の悩みを笑ってしまいたいあなたに。

好きそうな人・苦手そうな人

好きそうな人

・肩の力を抜いて笑いたい人

・自分とは違う考えを知りたい人

・ロックな考え方が好きな人

苦手そうな人

・人生を救ってほしい人

・真面目過ぎる人

あらすじ

あらすじ

「美人なのにふられる」「テレビが壊れた」「夫が愛してくれない」「年長者がサボってばかり」「やりたいことがありません」などなど、芥川賞作家・町田康が、一筋縄ではいかない数々の相談に答える「どうにかなる人生相談」。そして気鋭の物語作家・いしいしんじと東京の街を歩きながら人生について語り尽くす「苦悩の珍道中」を収録。世の悩める人々へ贈る、パンクな人生応援歌。

(本書裏表紙より抜粋)

作品情報

著者:町田康、いしいしんじ

ページ数:320ページ

ジャンル:エッセイ

出版社:角川文庫

紹介・感想

紹介

本書は町田康の前半人生相談、後半は町田氏といしい氏の対談の2部構成です。

人生相談は毎日新聞日曜版に連載されていた「どうにかなる人生」を集めたもの。

寄せられている相談はさまざまで、

・妻が痩せない

・酒を飲みすぎる

・ネコがいなくなった etc

どれも日常的な質問で、誰でも自分の持つ悩みと似たものを見つけられるでしょう。

後半の対談は両氏が東京の浅草、新橋、丸の内を散歩しながらの対談です。

散歩をしながら街行く人々をみてあれやこれや。

時には酒を飲みながら、のんびりと話していきます。

人生相談も対談もゆるっとしていて、肩肘の張らない感じです。

腰をすえて読むのではなく、頬杖をついてのんびり読むのが向いています。

ちなみに、後半の対談相手・いしいしんじ氏は作家で、「トリツカレ男」などの作品があります。

【真っ直ぐな寄り道】「トリツカレ男」【いしいしんじ】
ハマったことを夢中になって、憑りつかれたように朝から晩までやり続けてしまう。そんな純朴な男ジュゼッペ。彼が一人の女の子ペチカに恋をした。でも、彼女は色々な悲しみを抱えていて……。 現実に打ちのめされて、真っ直ぐ進めなくなったあなたが、この本でもう一歩踏み出せますように。

感想

人生相談

人生相談は新聞に寄稿された悩みに答える形式です。

ですが、9割ほどはあまり答えになっていません。

一見すると答えになっていないというか、かなり無茶な返答が多いです。

「隣人が道路で騒いでうるさい」→

「隣人へうるささを伝えるために、あなたも道路で奇声をあげて騒いでみては」

Image by Christo Anestev from Pixabay

必ずしも間違ってはいませんが、それが出来れば苦労はしない。

悩みそのものがバカバカしく感じるような、少し外れた返しがほとんどです。

返答を受けた寄稿者が笑って悩みを忘れられれば、それが一番の解決なのかもしれません。

逆にビジネスライクな、実際に使えそうな返答を期待している人には合わないでしょう。

読んでいる分には面白いので、純粋な読み物としては楽しみやすいと思います。

対談

後半の対談は、両氏が町を歩きながら、目にしたものに感想を言っていく感じです。

2人が歩いていく景色は西暦2000年前後ということもあって、少し古さを感じさせます。

実際に2人が見た景色見覚えがあるのは、30代後半以降の方でしょうか。

文字通り行き当たりばったり、喫茶店や飲み屋にも入りつつ、自由な会話を繰り広げます。

両氏ともに創作活動をするためか、世間への見方も独特です。

しかし、ただ独特なだけではなくて、観察がよく表れています。

街を行きかうサラリーマンを見て、「みんな、どこかと繋がっていたいのだろう」と話したり、

町田氏の「人の悩みは全部人間関係」という発言も印象的です。

適当な話題から始まって、徐々に哲学的な話題になるあたり、

普段気にしないことに真理があるのかもしれませんね。

感想

この本の中で紹介されている(回答した)悩みの解決方法は、一見ムリなものが多いです。

でも、それは本当にそうなのか? とも同時に感じました。

常識から外れた考えであることは、間違いありません。

でも、「不可能」というわけでもないです。

「出来ない」理由はほとんどが世間体や、面倒くささといったものでしょう。

とはいえ、平穏に生活をしていきたいなら、あまり実現するのは難しい。

では、そんな回答だと分かっていながら、なぜ悩みを相談する人がいたのか。

私が読んで感じたのは、

①寄稿者が求めていのは「笑い」なのではないか。

②回答に真理「も」含まれている。

この2つがあるのではないか、と思います。

①は、自分の悩みを聞いて、それを大したことじゃないと笑いに変えてもらう。

半ばふざけた回答をもらって、一緒に笑って、悩みの小ささに気づく。

自分だけでは気づけない、「面白さ」を求めているように感じました。

回答の大半は常識の斜め上を行く、ロックな回答です。

真面目に考えるばかりでは、上手くいくものもダメになる

そんな当たり前のことを、改めて気づかせてくれます。

②は、的を射た回答も多いためです。

「隣がうるさいなら、あなたも騒いじゃえ!」なんて、ふざけているように感じます。

でも、「相手を真似て、相手のことをしっかり知る」ことにもつながりますよね。

自分の見方だけでは、なかなか正しい答えにたどり着けません。

それなら、時には自分の常識を捨ててしまうことも、必要ですよね。

Photo by Jakob Owens on Unsplash

「幸福な人は、自分のことを幸福だと考えている」。そんな研究があるそうです。

この本そのものは、人生を救ってくれることはありません。

でも、自分の悩みが案外小さいことを知って、前を向く。

自分の常識にとらわれずにチャレンジしてみることで、人生が変わることはありえます。

あなたの考え方ひとつで世の中が違って見える。

そんな小さなきっかけになる……かも。

では、あなたが素敵な本との出会いに恵まれますように。

コメント

タイトルとURLをコピーしました