おすすめ度
★★★★☆(4.0)
ノンフィクションが好きな人におすすめです。
好きそうな人・苦手そうな人
・ドキュメンタリー・ノンフィクションが好きな人
・飛行機が好きな人
・極限状態の人間の感情の動きを読みたい人
・軽い内容が好きな人
・暗い内容が苦手な人
・これから飛行機に乗る人
あらすじ
飛行機に乗ったことのある人なら、誰もが一度は考える恐怖――「落ちないだろうか?」
その恐怖が現実のものとなった時、操縦席では何が起きているのか?
そのすべてを記録したボイス・レコーダー(CVR)には、墜落事故直前30分間の生々しい現実が刻まれている。
本書は、実際に起きた28の航空機事故後に回収されたCVR筆記記録をもとに書き記された、真実の記録である。
混乱、葛藤、不安、衝突、そして祈り……墜落事故期のコックピットの肉声が伝えるものは何か? 一分一秒に刻まれる、生と死をかけた28の人間ドラマ!
(本書裏表紙より抜粋)
書籍情報
・ページ数:411ページ(解説含む)
・著者:マルコム・マクファーソン(編著)
・訳者:山本光伸
・ジャンル:ノンフィクション
・出版社:ソニー・マガジンズ
感想
あなたにとって、緊急事態とはどんなものですか?
寝坊した、仕事でミスをした、お金がない。多くのの場合は命にかかわることは少ないのではないでしょうか。
本書は墜落、あるいは不時着した飛行機から回収されたボイスレコーダーの音声を文字に起こしたものです。
私たちが普段利用している飛行機には、ボイスレコーダーが搭載されています。
30分周期で録音が上書きされていくタイプのものです。
墜落などの際に事故の原因を解明し、次の事故を防ぐためですね。
本書に書かれている墜落の原因は様々です。
・人為的な判断ミス
・機械の故障やエラー
・機体の損傷
・バードストライク(鳥との衝突)
どれも実際に体験はしたくないものですが、実際に起こったものです。

不時着できた場合も、墜落してしまった場合も。
どちらも緊急事態に直面した、感情がむき出しの生の声が残っています。
人の声と同時に録音されている機械の警告音や、人工音声も妙に生々しく、その場を見ているような気になります。
無機質な機械音と焦りや恐怖の滲む人の声の落差に、不安を掻き立てられます。
むき出しの感情が描かれているせいか、文字を追っているだけでも鳥肌が立ってきます。
ボイスレコーダーの音声だけでなく、前後に事故の簡単な解説も書かれているので、状況を掴みやすく、より緊張が高まります。
この本を読んで飛行機が怖くなる、という方もいるかもしれません。
ちなみに、私は逆でした。
私は一時期、どうにも飛行機に乗ることが怖かった時期があります。
理由は分からないのですが、離陸と着陸の際に全身が強張って、ひどく緊張するんです。
ですが、ある時以降それが少しずつ緩和していきました。
そのきっかけとなったのが、この本を読んだことでした。
墜落の瞬間が克明に描かれている本を読んで、逆では? という方も多いと思います。
理由はおそらくですが、私の場合はこの本からパイロット達の強さを、より強く感じたのでしょう。
パイロットたちは異常事態に直面すると、まず状況の確認から始めます。
何もできずに墜落してしまう場合もありました。
何が起きているか、分からないことばかりです。
何をすればいいのか、正解なんて分かりません。
それでも、生還するために全力を尽くす。
そんな強さが、記録された音声には表れています。
これだけ闘ってくれる人がいるのであれば、大丈夫。
そんな風に思えたのだと思います。

現実は小説より奇なり、なんて言葉がありますが、現実故に心は揺さぶられるもの、と私は考えています。
本書は特に、創作をする方には是非読んでいただきたい一冊です。
記録された感情の動きはあなたを感動させ、あなたの感動が人を感動させる原動力になります。
では、あなたが素敵な本との出会いに恵まれますように。
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