あなたは幽霊がいると思いますか?
夏になると、ホラー特集で霊能者が心霊スポットに行く、なんて番組をよく見かけます。
私個人の意見では、テレビに出てくる霊能者は「自称」だと思っています。
では、それを科学的に追求しようとしたら、どんな結果がでるのでしょうか?
少し違った角度から解決に切り込む、ホラー・ミステリをあなたに。
おすすめ度
★★★★☆(4.1)
心霊現象を科学で検証。怖いだけでは終わらない、ホラー・ミステリ。
好きそうな人・苦手そうな人
・ミステリが好きな人
・違った視点から解決する物語が好きな人
・二転三転する物語が好きな人
・ライトな文体が苦手な人
・字の文が合わない人
あらすじ
学校の旧校舎には取り壊そうとすると祟りがあるという怪奇な噂が絶えない。
心霊現象の調査事務所である渋谷サイキックリサーチ(SPR)は、校長からの依頼で旧校舎の怪奇現象の調査に来ていた。
高等部に通う麻衣はひょんなことから、SPRの仕事を手伝うことに。
なんとその所長は、とんでもなく偉そうな自信家の17歳になる美少年、渋谷一也(通称ナル)。
調査に加わるのは個性的な霊能者たち。
ミステリ&ホラーシリーズ第1弾。
(本書裏表紙より抜粋)
作品情報
著者:小野不由美
ジャンル:ミステリ(ホラー)
ページ数:369ページ(解説含む)
出版社:角川文庫
備考:アニメ化原作
紹介・感想
紹介
本書は小野不由美によるホラー・ミステリ作品です。
小野不由美は「十二国記」「屍鬼」「残穢」等でも有名な実力派の作家ですね。
他の作品で馴染みのある方も多いのではないでしょうか。
一世代前のライトノベルで、テンポよく楽しみたい方にオススメです。
約30年前の小説の改稿ですが、全く古さは感じません。
舞台はとある高校で、歴史ある学校として描かれています。
取り壊そうとすると祟りがある、と伝わる旧校舎の謎を解明していきます。
ホラー・ミステリではありますが、あまり怖いと感じる内容ではないため、ホラーが苦手でも楽しめます。
感想
古いはずなのに新しいと感じさせる。そんな作品です。
立入禁止の旧校舎。そこは取り壊そうとすると事故が相次ぎ、半壊のまま放置されている。
こんな見覚えのある設定で、刊行は30年以上前の1989年。
にもかかわらず、「よくあるやつ」とは全く感じませんでした。
理由は主に2つあります。
1つ目は登場人物の個性がやたらと強いこと。
2つ目は解決へのアプローチが従来と違うことです。
まず、除霊に関する霊能者は、まとめると下記のとおりです。
・渋谷一也(ナル):17歳。SPR所長。自信家、毒舌。
・松崎綾子:巫女。服装、化粧が派手。ギャル風。
・滝川法生:僧侶(破戒僧)。ジーパン+法衣。長髪。
・ジョン・ブラウン:19歳。エクソシスト。京都風謎関西弁。
・原真砂子:霊媒。テレビ出演、海外での論文執筆歴あり。
除霊に関するだけでも5人。ほぼアベンジャーズのようなノリです。

まあ正直あまり活躍しない、噛ませ犬のような人もいますが。
ですが、一通り挙げた通り、全員が特徴や役割を持っています。
それぞれ役割や口調が分かれているため、「これ、誰だろう?」と混乱することはないと思います。
語り手であり、主人公の麻衣はいわゆる読者目線、常識人枠です。
ですが、彼女も個性派の霊能者に振り回されるばかりではない、強気で面白い性格です。
なお、地の文の語り口がはすっぱな口調のため、人によっては鼻につくかもしれません。
2つ目の特徴として、従来の作品とアプローチが少し違う、という点が挙げられます。
従来の作品はそもそも「幽霊がいる」という前提が多いです。
ホラーでいえば「学校の怪談」や「呪怨」、「リング」あたりが分かりやすいでしょうか。
幽霊がいて、悪さをしている。どうしよう。
ですが、本作では「そもそも幽霊の仕業なのか?」を突き止める段階から始まります。
しかも、主に科学的にアプローチしていきます。
赤外線カメラ、高感度カメラ、集音マイク等を設置して、各部屋の温度を記録して。
そして「これは幽霊の仕業だ!」という主張は、ほとんど科学的にぶった切られていきます。
心霊現象の特徴である温度変化がないから、何もいないはず。でも、物が勝手に動いたりする。
では、他に何が考えられるのか?
幽霊が「いる」「いない」という主張が行ったり来たりしながら、可能性を絞っていく。
個人的には事件の真相も、色々な意味で納得感があって好みでした。

「すべて錯覚でした」という元も子もない終わり方とも、また違います。
ホラー要素はありますが、ジャンルで言えばミステリになるかと思います。
不気味さはありますが、怖さはほとんどありません。ホラーが苦手な人にもおすすめです。
ちなみに、私の祖父から聞いた話を少し。
私の祖父の親戚に住職をしている方がいました。
鶏をしめる時には血を飲んだり、イセエビを殻も残さず食べたり、色々すごい人だったようです。
さて、ある休日に挨拶に行って話していると、その住職が横を向いて、「Aさんが通ったから、知らせがあるはず」と言ったそうです。
そして30分ほど後、Aさんが亡くなった、という知らせがあったそうです。
幽霊というのは実在していて、科学で証明できる日が来るかもしれませんね。
では、あなたが素敵な本との出会いに恵まれますように。
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