おすすめ度
★★★★☆(3.9)
好きそうな人・苦手そうな人
・エッセイが好きな人
・言葉に興味のある人
・日々の「あるある」が好きな人
・(毎日が退屈に感じている人)
苦手そうな人
・問題をしっかり深堀したい人
・腰を据えて本を読みたい人
・ありきたりな話は読みたくない人
あらすじ
日本人より日本痛の詩人、アーサーさんの日常とは? 「月極」の読み方に悩み、「ほかほか」の英訳を工夫する。
謡いの会では羽織を纏い、クリスマスにはサンタの扮装を。旅先では愛猫に手紙を出そうとし、鈴虫に夏を感じる。
「酔っ払う」の英語表現の多さに赤面し、戦争続きの母国を憂う。言葉のフシギから、社会、政治問題まで。日々の鮮やかさに気づかされる愉快で豊かなエッセイ集。
(本書裏表紙より)
作品情報
著者:アーサー・ビナード
出版社:新潮社
ジャンル:エッセイ
ページ数:238ページ(あとがき含む)
感想
あなたが「日本好きの外国人」と聞いて思い浮かべるのはどんな人でしょうか?
日本のアニメやゲームが好きな人は多く、城跡や神社仏閣などの歴史に関心を寄せる人も多いそうですね。
本作の著者、アーサー・ビナードは「日本語」にほれ込んだアメリカ出身の詩人・文筆家・翻訳家です。
著者は日本在住、日本語で詩作を行うなど、「日本語」への思い入れが強く、日本語に関するエッセイも多く書いています。
本書はそんな短編のエッセイを集めた、エッセイ集です。

題材として多いのは日本語に関すること、平和のこと、日本と海外(特にアメリカ)を比べてみたもの。
どのエッセイも切り口がコミカルで、少し考えさせられるものもあります。
といっても、小難しい書き方や説教臭さはなく、あくまで友人として著者と対話しているような気分にさせてくれます。
肩の力を抜きたい、日常を違う切り口で眺めたい、という人は楽しめると思います。
日本語の語源や英語のことわざに興味のある人は、読んでいて色々と発見がありそうです。
内容は著者が日常で感じたことなので、言葉や日常の風景に興味のない方には、イマイチかもしれません。
1編が短く、見開き1ページほどなので、さっくりと読めます。
私も日本語は好きで、誇れる日本の文化だと考えています。
趣味で小説を書いていると、情景の描写をする時や感情を表現する時、その多彩さに驚かされます。
エッセイの中にも話題にされていますが、言葉はその言葉を使う人々が集めてきたもの。
よく使われるもの、文化や生活の中で重要なものが増えていきます。
ただ、昔は使われていて今は使われない魅力的な表現、というものも多くあります。
そんなちょっとした不足に気づかせてくれたり、普段は意識しない生活の楽しさに気づかせてくれる。
そんな魅力を持った本です。

時には現実逃避でもいい。日常に非常口を探してみるのも楽しいと思います。
身近な日本語を今一度新鮮に見る機会として、いかがでしょうか。
最後に、私が経験した言葉のつながりについて。
日本では力を入れる時などに「せーの!」と言いますよね。
イタリア語では「セーノ」は「おっぱい」を意味する言葉で、日本に来ると面白く感じるのだとか。
ある時、私がテレビでモンゴルに関する番組を見ていた時のこと。
騎馬民族の組み立て式の家「ゲル」を現地の方が組み立てる時、「ホォッパイ!」と言いながら組み立てていました。
力を入れる時に行っているようなので、「よいしょ!」といった感じなのかもしれません。
イタリア人は日本に来るとこんな風に見えているのか、と少し面白く感じました。
欧米の言葉がラテン語から派生していったように、世界の言葉も、どこかでつながっているのかもしれませんね。
皆さんが素敵な本との出会いがありますように。
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